コメディは6割までしか完成させてはいけない!
そもそも「よしもと新喜劇」の稽古というものは
3時間ほどで作品1本を作りあげてしまう!
月曜日の夜中に3時間ほど稽古をして
その翌日から翌週の月曜日まで
合計20回以上のステージをこなす!
(そのうち土曜日がテレビの収録となる!)
私が作・演出・プロデュースする
「王立新喜劇」では
決してそうはいかない!
公演場所はいつも新喜劇を上演している
「なんばグランド花月」!
セットもいつもの新喜劇同様
ぺらぺらの「書き割り」と呼ばれる物!
照明変化もなく
お互いを「池乃さん」「花子ちゃん」と
芸名で呼び合う事まで
通常の新喜劇と同様である!
しかしながら脚本は間違いなく
「後藤ひろひと」が書いた物だ!
「松尾貴史」と5年間に渡って遊んだ
一攫千金コメディ「Biz シリーズ」
(『Big Biz』
『Bigger Biz』
『Biggest Biz』)
のような
”一言セリフを間違えば台無し”
となる複雑さ!
Piperで3本に渡って大ばかを楽しませてもらった
「バカ家族お屋敷シリーズ」
(『Spooky House』
『ひーはー』
『ベントラー・ベントラー・ベントラー』)
のような
ほんの数秒でも登場の瞬間を間違えたら
面白さが消えてしまう世界!
それらの手法を駆使した台本で
「よしもと新喜劇」を作り上げようと言うのだから
3時間稽古して終わりというわけにはいかない!
普段は渡された台本を一読しただけで
即座に舞台に上がる事のできる新喜劇メンバーも
「後藤ひろひと方式」の脚本は
なかなか手放さない!
真剣に見入り
丁寧に口に出してくれる!
新喜劇の稽古に特有の
「はいここであれこれありました!」
という省略をしない!
言いなれたギャグでも本気で何度も発してくれる!
いつもの稽古ならば
心などまったく込めずに
字面だけを音読し
「あとは本番で!」
と言ってしまうのだが
そんな事は決してしない!
しっかりと本番用の大きな声を出し
大きな動作でもって
全力で挑んでくれる!
私が書いた脚本を一文字も変えずに上演しようと
努力してくれるものだから
私には誤字・脱字すらも許されない!
なのに稽古場の笑いは絶えない!
キャストもスタッフも
演技を見てはみんなで大笑いしている!
何度やっても
演じる側までが笑うほど面白い
そんな作品が日に日に完成している!
素晴らしい現場だ!
これ以上理想的なコメディを作る過程はなかろう!
ではそんな昨日の稽古場を覗いてみよう!
そもそもなぜ稽古場にパチンコ台が2台あるのか?
私は知らない!
もちろんどれだけ出玉があっても
「たけのこの里」も何も
もらえはしない!
しかし一度始めてしまうと
大当たりが出るまで誰もやめようとはしない!
稽古場に終始鳴り響く
美空ひばりの歌声と
矢吹ジョーに起立をうながす丹下段平の叫び声!
女優「水野真紀」の横顔は真剣そのものである!
公演まであと1週間という緊張を胸に
パチンコ台を見つめるこの夫婦の集中も
極限までに高まる!
キュートな微笑みで
周囲をほっこりさせてくれる
「ちっさいおっさん」こと
「池乃めだか」氏!
しかしこうなればもう
ただの親父である!
しかも稽古途中に新喜劇の出番があるため
着ている物は板前の衣装だ!
今にも板長が現れ
「仕事中になにしてるんだ!」
とドヤされないか不安になるのだが
実際は稽古中に作・演出家の前にいるだけなので
それほど怯える必要もない!
「挙げ句」というのは
短歌や連歌などの
最後の「七・七」の部分であり
物事が「末に成る」事を表現するのに用いられる言葉だ!
なるほど!
「挙げ句」にパチンコ台の前で眠り始めた
「由美ねぇ」こと「末成由美」女史!
恐らく彼女の先祖はこういう事をして
「末を成した」ために
この名字を名乗る事になったのだろう!
私には私だけが従う哲学
「ひろソフィー」
がある!
「ひろソフィー」にはコメディに関する
こんな一節がある!
「コメディ作品は稽古の過程で
6割までしか完成させてはいけない!」
時たま10割仕上げようとする作・演出家がいる!
上演してみると
案の定ちっとも面白くない!
それはそうだ!
面白いはずがない!
なぜならそこまで仕上げた物は
お客さんの笑い声が挟まる余地を持たないからだ!
10割仕上げたコメディならば
舞台でやらずに
映像に撮って公開するべきだ!
9割仕上げたコメディは実に簡単に崩れる!
お客さんが笑った事で役者があわててしまい
テンポを見失うのだ!
お客さんが笑う事で方向を誤る作品など
既にコメディではない!
8割仕上げた物は不幸だ!
ほんの一工夫すれば!
セリフの強弱やテンポを
ほんの少し変えれば
お客さんは大喜びするはずなのに
「稽古ではこうしていたのだから!」
と意地を貫いてしまう!
そこにコメディアンがいて
そこに観客がいる!
やるべき事は一つなのに
中途半端な決め事が全てを台無しにする!
7割仕上げた物は最高だ!
残りの3割はお客さんから教わる事だ!
お客さんが望む物を
その場で感じながら自在に生み出し
舞台と客席は一体となる!
7割ほど理想的な数字はない!
しかしコメディを7割仕上げるには
稽古場で遊んではいられない!
脚本を元に色々な実験をして
色々な手法を探って
微妙なさじ加減で稽古を止めなければいけない!
やだ!
そんな面倒な職場に私はいたくない!
私は楽しまなければいけない!
いつどんな時にも
私は楽しくなければいけない!
あまりに稽古が始まらないので
心配になったプロデューサーが
「そろそろ稽古してみては?」
と進言して来た時!
それが6割だ!
それこそがコメディを作り出す上で
私にもっとも適した割合なのだ!
プロデューサーに叱られたので
やっとみんなでパチンコをやめた!
「未知やすえ」嬢が
「CRあしたのジョー」で
6回も当てた!
ウルフ金串もハリマオも
力石徹もカーロス・リベラも
みんなKOした!
かたわらには『ウェルかめ』の脚本が置かれていた!






